前の事務所から切手や印紙については、期末において未使用分(税込額面額)を不課税取引で貯蔵品に計上していました。
仕訳としては下記の通りです。
貯蔵品/通信費 不課税取引
職員から「棚卸は税込を計上すればいいですか?」と聞かれたので、「税抜経理方式の場合は税抜金額が棚卸額だよ」と説明しました。
そこで追加質問「では、貯蔵品の切手も税抜きに割り返して計上した方がいいですよね?」と。
…確かに。そうでないとつじつまが合わないよね。
改めて切手の処理について考察してみました。
物品切手の譲渡は非課税とされていますので、それを購入した段階では課税仕入れに該当しませんが、物品又は役務の提供の引換給付を受けた時にその引換給付を受けた事業者の課税仕入れとなります。
ただし、購入した物品切手で自ら引換給付を受けるものについて、継続して購入する日の属する課税期間における課税仕入れとして処理しているときは、この処理は認められます。
期中の処理としては、
通信費 573円 / 現金 630円
仮払消費税 57円
期末において貯蔵品に振替えたとしても、それは会計上(所得税法上又は法人税法上)の処理であって、消費税法上は、継続して購入する日の属する課税期間における課税仕入として処理をしています。
期末時点において、全額未使用の場合
貯蔵品 / 通信費 573円(不課税取引)
が正しい処理となります。
但し、せっかく正しい処理をしているのであれば、下記の様に処理してもいいのではないかと思います。
貯蔵品 630円(非課税取引) / 通信費 573円(課税仕入)
仮払消費税 57円
この場合、消費税法基本通達11-3-7 の規定からは外れて、原則的な取り扱いとなります。
「購入する日の属する課税期間における課税仕入として処理をしていない」
今までは 貯蔵品/通信費 不課税取引 630円 で処理していましたが、
これは明らかに間違いですね。
弊所はTKCシステムであるため、税抜の573円を計算する方が逆に面倒なので、下記処理で期末整理仕訳を計上しようと思います。
諸口/通信費 課税仕入 630円
貯蔵品/諸口 非課税仕入 630円
となります。
今回色々調べていた中で、下記通達を再考察しました。
消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品、作業用消耗品、包装材料、広告宣伝用印刷物、見本品その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。
上記通達があることで、切手や印紙は「一定数量を取得し、かつ、経常的に消費する」場合は、貯蔵品への振替が不要であるという見解もありますが、切手や印紙が「その他これらに準ずる棚卸資産」に該当しないのではないかと考えます。
貯蔵品と言うくくりとすれば、切手や印紙も上記通達に該当すると思われるが、上記通達が、限定列挙に近い形で記載していること、切手や印紙は換金性が高いことから、切手や印紙その他これらに準ずる棚卸資産(その他金券)については、上記通達に含まれないと考え、期末時点で1枚でも残っていた場合は、貯蔵品に計上すべきだと考えます。
税理士法第33条の2第1項に規定する添付書面記載例
[法人税・所得税]
項目:貯蔵品
消耗品その他これに準ずる物品については、概ね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費していることから、棚卸資産に計上せず、当期の費用としています。切手や印紙(その他金券含む)については、期末時点において実地棚卸を会社に依頼し、未消費分を棚卸資産として計上しています。
備考:法人税基本通達 2-2-15
[消費税] ※税抜き価格で貯蔵品計上する場合
項目:通信費(切手の取扱い)
切手の購入については、物品切手の譲渡として非課税取引が原則ではありますが、自社で使用する為に購入し、かつ、毎期継続して購入時に課税仕入れとして処理をしている為、役務提供時ではなく、購入時に課税仕入としています。
備考:消費税法基本通達11-3-7
[消費税] ※消費税法基本通達11-3-7を適用しない場合
項目:貯蔵品
消耗品については、購入時に課税仕入として処理をしているため、税抜価格を棚卸資産として計上しています。切手については、購入時に課税仕入で処理をしていますが、期末において未使用分を課税仕入れから非課税仕入に振替計上を行っており、購入額面金額を棚卸資産として計上しています。
備考:消費税法30条第1項1